一般社団法人足利青年会議所

理事長所信

2012年度
社団法人足利青年会議所
理事長 飯島丈博

2011年3月11日、東日本を襲った大震災による爪あとは深く、経済の低迷、政治の混迷により日本国全体は大きな不安に苛まれました。閉塞感漂うこの国に明日はないのか?

『そんな事は、決してありません!』我々には、忍耐と努力、未来を変え得る勤勉さと協調性があります。今こそ、一人ひとりが立ち上がり何かを変える時です。現在を生きる私達は、熱い思いを胸に秘め未来の為に、新しい地域の創造に向けて歩きはじめるのです。今回の震災後の様々な経験と思いを風化させない為に。

学知利行 ~未来への道標~

我々は、豊かな自然に恵まれ、遥かな昔から文化が開けた学問と産業のまち足利市に生まれ育ち、暮らしています。足利市の歴史を紐解けば、フランシスコ・ザビエルが「日本国中最も大にして最も有名な坂東の大学」と記した足利学校があり日本国中から多くの学徒が学んだ歴史ある地であります。産業としては、江戸時代頃より絹綿織物の産地として基礎を確立し、昭和初期頃「足利銘仙」が開発され大衆着尺の銘仙産地として躍進し、その後トリコット産業などの総合繊維生産地として栄えました。独立心が強く商売人気質の多い足利の地に、縁あって集いし青年経済人が「明るい豊かな社会」を築く事を理念とし、地域を愛し、時代の先駆者として地域と市民に影響を与え続ける青年の学び舎として社団法人足利青年会議所(以下、足利JCと省略いたします)が設立され、現在まで継承されてきました。先人達の思いとはどんなものなのでしょうか。亡き父が好きであった「ゆずり葉」の木を見る度に思いを巡らせます。

「子供たちよ、これは譲り葉の木です。この譲り葉は、新しい葉が出来ると入り代わって古い葉が落ちてしまうのです。こんな厚い葉、こんな大きい葉でも新しい葉が出来ると無造作に落ちる、新しい葉に命を譲って。子供たちよ、お前たちは何を欲しがらないでも、凡ての物がお前達に譲られるのです。太陽の廻るかぎり譲られるものは絶えません。輝ける大都会もそっくりお前たちが譲り受けるのです。読みきれないほどの書物もみんなお前たちの手に受取るのです。幸福なる子供たちよ、お前たちの手はまだ小さいけれど。世のお父さん、お母さんたちは、何一つ持ってゆかない。みんなお前たちに譲ってゆく為に、命あるもの、良いもの、美しいものを、一生懸命に造っています。今、お前たちは気が付かないけれど、ひとりでに命は延びる。鳥のように歌い、花のように笑っている間に気が付きます。そしたら子供たちよ。もう一度、譲り葉の木の下に立って譲り葉を見る時が来るでしょう」

これは、河井酔茗氏の「ゆずり葉」の詩です。我々は、先人達より思いを託され今を生きています。我々は、先人達の背中を追うだけではなく、先人の目指した先を追い求める為に現在に全力を尽くし、さらに未来に託さなければなりません。

現在、我々を取り巻く経済環境は、率先してJC活動をする余力がない現状かも知れません。JC活動により直接的に会社が潤う訳ではありません。会員数の減少などによる諸問題は、会員への負担や会の推進力に対して影響を与えています。個人的に得るものがない団体は、時代の奔流に淘汰されてしまいます。だからこそ、足利JCは、我々青年経済人や地域の一市民としての“学び舎”として存在しなければなりません。同じ志を持つ仲間を増やす努力は基より、青年経済人として、地域の一市民として、子を愛する親として、JAYCEE会員の一人として学びと意識と資質の向上、実行力、人間力など学校で教わった教育ではなく、自らの学びと経験を得る場でありたいと思います。我々の活動により「ひとが育てば、まちが育つ」を実践し、自ら学び、考え、行動した者だけが、価値ある明日を手に入れる事ができる事を証明したいと思います。

大変な時代だからこそ一致団結し、仲間に対しての共助の心と関係諸団体との協働により「真に豊かな足利」の実現を目指し、全会員が切磋琢磨し、苦しみや喜びを共有できる組織にしたいと思います。変化というものは誰かにつき従うものではなく、時には自分自身で作り上げるものです。我々の思いを受け継ぐ者の為に、新たな道を歩む時ではないでしょうか。選択した道は、努力によって最良な道とすればいいのだから。

■三つの学びの場

我々は青年会議所を離れると家庭や企業、地域社会の一員であり、様々な役割を担い生活しております。JCとは何か?と問われた時に、何かを変えたいと思う多くの仲間が集い、普段経験できない事を自ら学び、経験し自身を成長させる青年の学び舎です。そして成長した多くの仲間が「明るい豊かな社会」の実現の為に日々活動している団体であると答えます。その問いの答えを実践し、家庭や企業、地域社会で多くの人から信頼と信用を得る為には、まず我々自身が「豊かな人間性」を持ち、磨きを掛けなければなりません。2012年度は、三つの研修を行っていきたいと思います。一つ目は、「ひと」が歩んでいくべき正しい道。人に対して持つ心と自身に対して持つ心の両方が一体となり日本人として持つ美しい心を学びます。二つ目は、地域社会を支える経済人として学ぶべき道。企業に還元出来る事を学ぶ事は、延いては地域社会の発展に寄与できます。青年経済人として、社会のリーダーとして持つべき心を学びます。三つ目は、自身が所属する組織とJAYCEEとして進むべき道。青年会議所の組織とJAYCEEの基礎・基本を学び、地域社会の為に活動している意義を改めて学びます。それぞれの学びを時に厳しく、時に楽しく、時には会議の中で語り合う事で「豊かな人間性」を育み、自身の成長と向上を実感して、組織として会全体の推進力の増進を図ります。

■心の豊かさの未来を見据えて

足利JCは、2008年度の創立50周年に中期ビジョンとして「市民と共に豊かな心を育む運動を展開し、『心の豊かさを市民が実現できるまち足利』を築きあげる」と策定し、方向性を合わせ数年に渡り事業に取り組み、地域社会に種を蒔きました。2010年度には、中期ビジョンにぶれない、シンプルで結果が分かりやすい事業を構築し花を咲かせました。今、創立55周年を目前に控え、改めて中期ビジョンである市民と共に豊かな心を育む運動についての未来像を確立すべき時であります。昨今、子供たちを思う親と子供たちを教える教師と地域住民(PTCA)の連携による運動展開がされ、地域の青少年問題を考える諸団体が多数ある中、地域社会の一市民として、子を愛する親として、我々足利JCが本当に必要とされている活動とは何か。まず、そんな調査と研究が必要と思います。近年の活動を改めて再検証し、地域の関係諸団体との協働を見据えて、刻々と変化する地域社会の状況と青少年問題を見据えて足利JCの身丈を考慮しながら「心の豊かさを市民が実現できるまち」を築く為に、現実性も視野に入れながら活動を行いたいと思います。

■つながりを持ち、共に歩む

「ひと」が集い「組織」として同じ方向性に向かった時、不可能を可能にする力が発揮されます。それが「組織」が「組織」たる所以であります。しかし、時には「組織」の考え方と個人の考え方が合致しない時もあり、同じ志を持っていても進む道が違う時もあります。「明るい豊かな社会」の実現には、進むべき道の方向を確認し、誰かが与えてくれるのを待つのではなく自ら歩みだす事が必要です。そして、支えてくれる良き理解者と共に進む多くの仲間が必要ではないでしょうか。仲間とは、共に歩む者。共に笑い、共に感じ、共に迷い、共に泣き、時に熱く語り合い、互いを認め合い、集いし時には自分が素になれる。そんな「つながり」を持つ事ではないでしょうか。まずは、全会員が「つながり」と信頼を持ち「仲間っていいな」と思える交流を行いたいと思います。また、幸いにも、我々には多くの出会いがあり、多くの経験豊富な先人がいます。地域に目を向ければ「足利を元気に」、「地域の活性の為に」と我々と同じ志を持ち活動している団体も多くあります。そんな多くの「ひと」や「組織」と活動を共にしていきたいと思います。協働による活動は、新たな学びと自身の成長、足利JCの活力に繋がり「明るい豊かな社会」の実現に前進するはずです。「ひとが育てば、まちが育つ」そんな思いを持ち、時には楽しく、時には真面目に、参加した全員が何かを得て「つながり」を持てる事業を行いたいと思います。

■JCがJCである為に

「明るい豊かな社会」の実現の為には、全会員が精一杯活動できる「組織」の環境が必要です。そんな「組織」の環境を作っていくのが「総ての務めを担う」と書く総務ではないでしょうか。足利JC全体と会員一人ひとりを影から支え、足利JCの理事会や事業は基より様々な活動に参加し、主催者とは違った視点で活動を見て、反省点なども踏まえ未来の為により効果的な方法(意識や書式)を検討する。否定ではなく、より良くする為に行う改革が、今後の足利JCという「組織」を磐石の態勢にします。総務や運営での学びは、一人で出来る作業も複数人集まり明確な意図と情報の共有を行う事で、効率が上がり、会全体の推進力が増進し、全会員の意識変革へ誘い「組織」に大きな変化をもたらします。新しい道を歩む足利JCが足利JCであるために「組織」として現状と未来を見据えて新しい運営と組織の形を模索していきたいと思います。また、近年急速に発展している情報発信ツールを使い、足利JCや会員相互、各事業により「興味」や「関心」を持って頂ける効果的な発信をしたいと思います。2012年度は、多くの「ひと」や「組織」と繋がる場面が多々あり、そのコミュニケーションが円滑に行われる為にも、広報の強化は非常に重要になります。内部統制と外部発信の窓口など多岐に渡る活動を磐石な体制で挑みたいと思います。
 
■持続的に発展できる主管事業

足利JCが築き上げてきた足利文化財パトロール隊と足利尊氏公マラソン大会は、足利文化財パトロール隊友の会の設立や行政による北関東道マラソン大会運営などにより足利JCが担ってきた事を関係各所に任せられる部分が増え、事業として新たなる道を進み始められる可能性を秘めています。近年、足利JCは会員数の減少などの問題により主管事業に力を注ぐには厳しい状況である事は否めません。足利JCの都合で、新しい道を歩み始めた事業の歩みを止める訳にはいきません。財政面、運営面、リスク管理といった様々な懸案事項があり前面に出るのか、後方支援として各組織を支えるのか、現在の状況と未来を見据えて足利JCの責任所在を明確にしなければならないのではないでしょうか。地域で、一定の評価を得ているこれらの事業を更に「持続的に発展できる事業」としていく為には、諸問題を真摯に受け止め、足利JCの責任を全うする事が何より重要であります。諸先輩、関係者、関係諸団体と共に一致団結し、主管事業の進む道を実現するために足利JCの責任を全うしていきたいと思います。

■出向からの学び

2012年度、足利JCから公益社団法人日本青年会議所関東地区栃木ブロック協議会の会長を輩出致します。こんな大変な時代に、その責務を受けてくれた漢は、「士にして居を懐うは、以って士と為すに足らず」(居心地のいい場所に留まっているのは、漢ではない。本当の漢なら自分の世界を飛び出して学んでみるものだ)と多分こんな思いを持って出向を決めたのではないでしょうか。世の中に完璧な「ひと」はいません、こんな熱い心意気を持った漢でもきっと完璧ではないでしょう。だから、足利JCとして全会員が全力で支えていかなければなりません。支えるとは仲間と苦楽を共にする事。自分の世界を飛び出して、未知なる場所での活動は多くの痛みがあるかもしれません。しかし、その痛みの先には、多くの経験と学びがあり「組織」と全会員の成長に繋がります。

■新しい道を歩む

2008年施行された公益法人制度改革は、足利JCに新しい学びの場を与え、2009年度、総会の決議により「複数年に渡り公益社団法人を目指す」として未来の道を考える場を与えました。複数年に渡り公益社団法人を学んだ足利JCは「明るい豊かな社会」という公の利益を目指す団体であるという思いは変わりません。しかし、青年会議所は、会員の学びの場でもあります。全会員が学び、成長し、「真に豊かな足利」を目指す団体である事を考えた場合、現行の公益法人制度の法律では非常に厳しい面があります。移行認定期間の2013年11月末日が目前に迫る今、現状を考え、多くの会員の理解が得られる形の発信をし、2012年度中に決着をつけ最善の進むべき道を歩みだしたいと思います。

■新しい風の通り道

「何かを変えたい」と思う「ひと」が集い、「組織」を形成した時には、時には時代を変える力が発揮されます。志を共にする仲間を増やす事は、会員の会費で運営をしている足利JCという「組織」を維持させて、目指すべき「明るい豊かな社会」の実現の為には必要な事かもしれません。しかし、「組織」の維持や「数は力」的な理論の為だけに足利JCの仲間を増やす事は何か違う気がします。

私は、足利JCに「甘えた考えの自分を変えたい」と思い入会しました。多くの先輩や仲間と行動を共にし、語り合い、学び、その中で少しずつ地域社会の為に自分が出来る事は何かを考え始め、成長させて頂きました。40歳で卒業された先輩方は、きっと足利JCでの学びと「明るい豊かな社会」の実現という意識を胸に刻み地域社会や地域経済界で活躍されているのではないでしょうか。青年会議所は、20歳から40歳という責任ある世代が、人として、地域社会の一市民として、青年経済人として、親として多くの学びを得られる青年の学び舎であります。多くの協力者と共に「何かを変えたい」と思う地域の責任ある世代の人々を、学び舎である足利JCに誘いたいと思います。そして、新しい仲間は、我々に新しい気付きと「組織」に新鮮な風を巻き起こしてくれます。その為にも精一杯の努力をしたいと思います。

■未来への道標

「やってみせ、言って聞かせて、させてみて、褒めてやらねば人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず」

これは、大日本帝国海軍元帥 山本五十六氏の名言です。この言葉のごとく私は、多くの先輩や仲間と共に学びの中から成長させて頂きました。そして、足利JCで多くの経験と学びを得て自身を成長させて頂いたと思う者が、次代の足利JCを担う人達に、自身の経験と学びを伝え、託す事が、多くの先輩や仲間に対する恩返しであり責任であると思います。

私がテーマに掲げさせて頂いた「学知利行」という言葉は、人が踏み行うべき人倫を後天的に学んで理解し、その正しさを知り認めて、初めて実践すること。まさに青年会議所での学びではないでしょうか。20歳から40歳という責任ある世代が集い、「何かを変えたい」と心意気を持ったメンバーが集い、活動の中で仲間と共に多くの事を学び、理解し、実践し成長していく。それが「真に豊かな足利」の実現の為に、自分自身の為に、我々を支えてくれる家族や企業の為に、我々に全てを託した偉大なる先人達の為に必要な事ではないでしょうか。そして、我々が一生懸命に造ったものを「ゆずり葉」のように未来の子供たちに渡していきましょう。

2012年度は、大きな変革の年であります。私は組織のリーダーとして多くの決断をしなければなりません。リーダーは、組織を目指すべき方向に纏め、決断をし、目標に向けて真摯に取り組まなければなりません。多くの仲間と語り合い「つながり」を持ち、全体と現場から物事を考え、未来への「想い」を忘れずに「多くの人が共感できる決断」をしたいと思います。私が愛する足利JCが青年の学び舎としてより発展し、「明るい豊かな社会」の実現の為に、先人の思いと仲間への感謝を胸に自らが範を示していきたいと思います。そして、2012年度が次代を担う多くの人達への「未来への道標」となるべく、一年間邁進していく事を誓います。